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技術コラム

記事公開日

シリーズ工業炉Seminar(2)馬力とkW(その1)

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0.2、0.4、0.75、1.5…は何の数列?

0.2、0.4、0.75、1.5、2.2、3.7、5.5、7.5、11…という数値は、モータなどの動力でよく目にするkW表示です。

一見すると規則性のない数列ですが、従来使用されてきた馬力による容量区分との対応を見ると、その関係が分かりやすくなります。実務上は1馬力をおおむね0.75kWとして扱うことがあり、0.75kW=1馬力、1.5kW=2馬力、7.5kW=10馬力、15kW=20馬力と対応します。

kW kW÷0.75 呼び馬力
0.1 0.133 1/8
0.2 0.267 1/4
0.4 0.533 1/2
0.75 1 1
1.5 2 2
2.2 2.933 3
3.7 4.933 5
5.5 7.333 7
7.5 10 10
11 14.667 15
15 20 20
18.5 24.667 25
22 29.333 30
30 40 40
37 49.333 50
45 60 60
55 73.333 75
75 100 100
90 120 120

ただし、右列は「呼び馬力」であり、kWを正確に馬力へ換算した数値ではありません。0.2kWや0.4kW、5.5kWなどのように単純換算値とは一致しないものもあります。現在はこれらの数値がモータなどの定格出力系列として定着しているため、すべてのkW値が馬力を単純換算して決められているわけではありません。

馬力はなぜ生まれたのか

馬力という単位が広まった背景には、人や馬による動力から機械動力へ移行していった産業革命期があります。

蒸気機関が普及する以前、鉱山の排水や荷物の運搬、製粉所などの機械を動かすために馬が重要な動力源として使用されていました。そのため、新しく登場した蒸気機関の能力を説明する際にも、「この機械は馬何頭分の仕事を行えるか」という比較は、当時の人々にとって理解しやすいものでした。

蒸気機関の能力を馬の働きと比較する考え自体はジェームズ・ワット以前にも見られましたが、18世紀後半にワットは、自らの蒸気機関の能力を表す尺度としてhorsepower(馬力)を用い、機械の出力を共通の数値で示す方法を定着させていきました。

ワットの1782~1783年の計算帳には、製粉所で働く馬について、製粉機技師から得た「直径24フィートの円を1分間に2.5周し、約180重量ポンドの力を出す」という情報を基に計算した記録が残っています。この条件から求めると、馬1頭の仕事率は約32,400ft・lbf/minとなります。

同じ計算帳には、馬1頭分の仕事率として1分間に33,000ft・lbfに相当する値を用いた記録も残っており、これが現在の英馬力(HP)の基礎となりました。

一方で、ワットが自ら馬を使って33,000ft・lbf/minという値を実測したことを示す確かな記録は確認されていません。後世には醸造所の馬を使った実験など複数の説明が伝えられていますが、具体的な実験方法を一つの史実として確定することはできません。

馬力という共通の尺度が用いられるようになったことで、蒸気機関の能力を従来の馬による動力と比較しやすくなり、さらに異なる機械同士の能力も数値で比較できるようになりました。

こうして馬力は、馬による動力から機械動力へ移行していく時代に、機械の能力を分かりやすく表す実用的な尺度として広く使われるようになりました。

kWと馬力の関係

kWと馬力は、どちらも仕事率を表しています。ただし、「馬力」には一つだけではなく、代表的なものとして英馬力(HP)と仏馬力(PS)があります。

種類 1馬力のkW換算 1kWの馬力換算
英馬力(HP) 約0.7457kW 約1.3410HP
仏馬力(PS) 約0.7355kW 約1.3596PS

英馬力と仏馬力では値がわずかに異なり、1HPは1PSより約1.4%大きい値です。一方、実務では簡易的な対応として1馬力≒0.75kWと扱われることがあります。

では、なぜ0.75kWという値が使われるのでしょうか。

なぜ1馬力は約0.75kWなのか

前項で説明したとおり、英馬力(HP)の基準は1HP=33,000ft・lbf/minです。この値を現在の単位であるW(ワット)へ換算すると、なぜ1馬力が約0.75kWとされるのかが分かります。

1HP=33,000ft・lbf/min=550ft・lbf/s
1分あたりの仕事率を、1秒あたりに換算
1ft=0.3048m
1lbf=約4.44822N
ft(フィート)をm(メートル)、lbf(重量ポンド)をN(ニュートン)に換算
550 × 0.3048 × 4.44822
=約745.7N・m/s
550ft・lbf/sを現在のSI単位に換算
1N・m/s=1W
N・m/sは仕事率の単位W(ワット)と同じ
1HP=約745.7W=約0.7457kW

つまり英馬力(HP)は、現在の単位で見ると約746Wです。0.75kWは750Wなので、その差はわずか約4.3Wであり、1HPは0.75kWに非常に近いことが分かります。

一方、メートル法系では75kgf・m/sを1馬力とする基準が使用されるようになりました。これが仏馬力(PS)です。1kgf=9.80665Nなので、75 × 9.80665=約735.5N・m/sとなり、1N・m/s=1Wであることから、1PS=約735.5W=約0.7355kWとなります。

馬力 kW換算 0.75kWとの差
1HP 約0.7457kW 約0.0043kW
1PS 約0.7355kW 約0.0145kW

このように、英馬力も仏馬力も750W前後です。そのため、容量を大まかに対応させる場合には1馬力≒0.75kWという分かりやすい換算が使用されてきました。

特にモータ容量では、0.75kWを1馬力、1.5kWを2馬力、7.5kWを10馬力、15kWを20馬力と見ると分かりやすく、従来の馬力による呼称との対応にも使用されてきました。

ただし、「1馬力=0.75kW」はあくまで慣用的な近似であり、正確な換算では1HP=約0.7457kW、1PS=約0.7355kWです。

馬力は「仕事率」を表す単位

仕事率とは、単位時間当たりに行われる仕事、すなわち単位時間当たりにどれだけのエネルギーが移動・変換されるかを表す量です。

仕事率 単位時間当たりの仕事・エネルギー
主な表示 W、kW、HP、PSなど

例えば仏馬力では、75kgfの力で物体を1秒間に1m動かすときの仕事率を1PSとしています。

つまり馬力は、単純に「どれだけ大きな力を出せるか」を表しているのではありません。同じ力であっても、より速く仕事を行えば仕事率は大きくなります。馬力やkWは、力だけでなく移動距離と時間を含めた動力の大きさを表しています。

英馬力(HP)と仏馬力(PS)

英馬力と仏馬力は非常に近い値ですが、基準としている単位系と定義が異なります。

項目 英馬力 仏馬力
経緯 ジェームズ・ワットが蒸気機関の能力を表す尺度として採用・定義 メートル法系で75kgf・m/sと定義された馬力
単位記号 HP PS
Horsepower Pferdestärke
  ドイツ語で「馬の力」を意味する名称
基準単位 ヤード・ポンド法 メートル法
定義 550重量ポンド(lbf)の力で 75kgfの力で
1秒間(sec)に1フィート(ft) 1秒間(sec)に1メートル(m)
動かすときの仕事率が1HP 動かすときの仕事率が1PS

英馬力の定義をメートル法系の重力単位へ換算すると、おおよそ次のようになります。

550lbf × 0.4536 ≒249.5kgf
249.5kgf × 0.3048m ≒76.0kgf・m/s

仏馬力の基準は75kgf・m/sであるため、両者は非常に近い値ですが、完全には一致しません。その結果、1HP=約0.7457kW、1PS=約0.7355kWという違いがあります。

また、仏馬力を表すPSはドイツ語のPferdestärkeの略です。「仏馬力」と呼ばれるのに単位記号がドイツ語なのは一見不思議ですが、「仏馬力」は日本でメートル法系の馬力を区別するために用いられている呼称で、PSという記号自体はドイツ語に由来します。

現在の仕事率の単位はワット(W)

現在、仕事率を表す国際単位系SIの単位はワット(W)です。1Wは、1秒間に1ジュール(J)の仕事を行う仕事率として、次のように表されます。

1W 1J/s
1kW 1,000W

工業設備では出力が大きいため、Wよりも1,000Wを表すキロワット(kW)が一般的に使用されています。

国際単位系は、1960年の第11回国際度量衡総会(CGPM)でInternational System of Units(国際単位系、SI)という名称が正式に採用されました。SIでは仕事率の組立単位としてワットが使用され、現在の機械・電気設備ではkWによる表示が基本となっています。

馬力はSI単位ではないため、現在の国際的な単位体系ではWやkWを基準として仕事率を表します。

馬力は現在も使われている?

馬力はSI単位ではありませんが、現在まったく使用できない単位になったわけではありません。

日本の計量法では、原則として法定計量単位を取引または証明に使用します。一方、仏馬力については例外があり、内燃機関または外燃機関に関する取引・証明に用いる場合には、工率の法定計量単位とみなされています。

また、内燃機関または外燃機関の工率を計量する計量器については、仏馬力による目盛を付したものも当分の間販売することが認められています。

そのため、自動車やエンジンなどでは現在もPSという表示を見ることがあります。一方、モータや一般的な産業設備ではkW表示が基本であり、馬力が残っている分野とkWへ移行した分野が併存しているのが現在の状況です。

馬力で表された動力計算式

古い参考書では、動力計算式が馬力(PS)を使用して表されている場合があります。

回転体について、回転半径をr、回転数をN、力をP、トルクをTとすると、トルクは次の関係になります。

トルク T [kgf・m] =r [rpm] ×P [kgf]
記号 内容 単位
PS 動力 馬力
r 回転半径 m
N 回転数 rpm
P 力 kgf
T トルク kgf・m

1回転で移動する距離は2πrです。回転数N(rpm)を掛けると1分間の移動距離となり、60で割ることで1秒当たりに換算できます。また、1PS=75kgf・m/sであるため、馬力は次のように表されます。

PS= 2πrN 60 × P 75 = 2πN 60 × rP 75 = 2πNT 60×75 ―― ①式

この式に現れる60は分から秒への換算、75は1PS=75kgf・m/sという仏馬力の定義に由来しています。

古い計算式で突然「75」という数字が現れる場合、その背景には仏馬力を基準とした動力計算が残っていることがあります。

馬力の計算式をkWに換算する

前項①式の馬力による計算式をkWへ換算します。

仏馬力では1PS=約0.7355kWであるため、

kW = 2πNT 60×75 × 0.7355

となります。

また、重力単位を使用した従来の計算では、1kWを約102kgf・m/s、1分当たりでは約6,120kgf・m/minとして扱うことがあります。この近似値を使用すると、

kW = 2πNT 60×102 = 2πNT 6,120

となります。

さらに、2π/6,120≒1/974として、次のように表すこともできます。

kW = N×T 974

この式では、Nの単位をrpm、Tの単位をkgf・mとします。

ここでT=r×Pを代入すると、

kW = 2πNrP 6,120 = 2πrNP 6,120

となります。

さらに、2πrNは円周×回転数であり、周速度をU[m/min]とすると、

kW = 2πrNP 6,120 = U×P 6,120

と表すことができます。この式ではPの単位をkgfとします。この形にすると、動力は基本的に「速度×力」で求められることが分かります。

古い計算式にkgfが残っている理由

古い機械設計の参考書や計算書では、力を表す単位としてkgf(重量キログラム)、トルクとしてkgf・m、圧力としてmmAqなどが使用されていることがあります。

kgfは、質量1kgの物体に標準重力加速度が作用したときの力を基準とする単位です。現在のSIでは、力はニュートン(N)で表します。

量 従来よく使用された単位 SIによる単位
力 kgf N
トルク kgf・m N・m
仕事率 PS W、kW

1kgf=9.80665Nです。そのため、現在のSI単位だけで計算する式と、kgfやPSを使用する旧来の式では、式中に現れる換算係数が異なります。

例えば、馬力による計算式に現れる「75」は1PS=75kgf・m/sという仏馬力の定義そのものに由来します。一方、kWへ換算した式に現れる「6,120」「974」は、kgf・mとkWの間の換算から生じる近似値です。

したがって、これらの数値は単なる経験値ではありません。既設設備の設計書や古い技術資料を読む場合には、計算結果だけでなく、その式がどの単位系を前提としているかを確認することが重要です。

搬送動力と送風機動力

搬送設備の動力計算では、前項で示したように速度と力の積が基本となります。

搬送動力の基本 仕事率 = 速度 × 力

一方、送風機では、流体へ与える仕事率の基本となる量は風量と風圧です。

空気動力の基本 仕事率 = 風量 × 風圧

例えば、風量をm3/min、圧力をkgf/m2として単位を整理すると、

風量 [m3/min] × 風圧 [kgf/m2]
= 速度 [m/min] × 力 [kgf]

となります。

つまり、送風機の「風量×風圧」も、単位を整理すると搬送設備における「速度×力」と同じ形になります。

ただし、「風量×風圧」で求められるのは流体へ与えられる仕事率の基本値です。実際に送風機を駆動するために必要な軸動力を求める場合には、送風機の効率ηを考慮する必要があります。
実用的には η ≒ 0.45 程度で見積もるのが一般的です。

軸動力の考え方 軸動力 = 空気動力 ÷ 送風機効率η

さらに実際のモータ選定では、伝達方式や運転条件、必要な余裕なども考慮して容量を決定します。

馬力からkWへの換算過程を追っていくと、モータ容量の数列、古い動力計算式に残るPSやkgf、搬送設備や送風機の計算式は、それぞれ別々のものではなく、すべて「単位時間当たりにどれだけの仕事を行うか」という仕事率の考え方につながっていることが分かります。

次回は、馬力とkW(その2)をお届けします。
コンベアや昇降扉に必要な動力の求め方などについての話です。

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